{space}潮香
以前友人に誘われて、1ヶ月間ひじき加工の季節バイトをしたことがあります。
地元での季節バイトは楽しそうだと思いましたが、よく話を聞くと朝5時スタートとのこと。早起きが苦手なので一瞬悩みましたが、興味の方が勝り、その1ヶ月間は近い地域に住んでいた友人宅に泊まり込みでバイトをすることにしました。
それからしばらく経ちますが、その時の香りと見た景色が今でも鮮明に記憶に残っており、今回その景色を久しぶりに見たくなり、早起きをして出かけてみることにしました。
ちょうど、当時と同じ時期。タイミングがあえば、ひじき加工の様子が見れるかもしれない。ただし、ひじきが採れるかどうかは天候次第。楽しみに車を走らせました。
朝4時半、明け方前の空に映える鴨川市の街灯。
少し遠いところへ車を停めて、波音を聴きながら作業場へ。そこには、当時と変わらない作業場が。
残念ながらこの日は作業がなかったようでした。ただ嬉しかったことに朝の散歩終わりだった先代と偶然お会いし、ひさしぶりに作業場を見せてもらえることに。
ひじきを蒸すための釜。
僕がバイトをしていたこの加工場では、一般的なひじき加工と違い鮮度にこだわり、収穫後に一度乾燥させることなく採れたての生ひじきを蒸し煮にし、房総の磯の香りを閉じ込めていました。
この釜に生ひじきを入れて蒸し煮にする際は、蒸す過程で量が減るので、採れたての生ひじきをどんどん追加していきます。この大きな釜からでる大量の湯気の中で重たいひじきを追加する作業は大変でしたが、次第に窓から朝陽が差し込んできて湯気が照らしだされた光景はとても美しい景色でした。
当時の写真がスマホに残っていました。
朝採れの生ひじき
房総の荒波に揉まれ
肉厚に育ったひじき
蒸しているあいだの湯気
朝陽が差し込んでくると
疲れていた身体も元気を取り戻しました
蒸し上がると、この籠に蒸したひじきを入れて乾燥場へ運びます。
蒸しあがり、
黒くなったひじき
(ステンレス製の釜だと黒くならないのだそう)
乾燥場。
蒸しあげてから乾燥作業に入る頃には外も明るくなり、いつも海が見え、潮の香りが届いていました。
海の見える作業場
ひじき加工はどの過程の作業も美しく、今でも思いだすことが多いです。
房総の海沿いでは、旧暦の2月15日〜3月15日頃になると、干潮になった磯でひじき刈りをする光景が見られます。春のこの景色がいつまでも続くと良いなと思います。
写真・文 カマダ
取材協力
ヤマチョウ合同会社