{track}上総中野駅
房総半島を東西にわたる小湊鐵道といすみ鉄道の二つの私鉄をつなぐ駅、上総中野駅。
偶然その近くに線路に沿った小道を発見した。駅までの小さな冒険のはじまり。
小湊鐵道側の、駅に一番近いこじんまりとした踏切がスタート地点。
遠目に見える駅を目指して、ゆっくりと歩みを進める。
まだ残暑厳しい秋のはじまりの季節。
蒸し蒸しした空気に、蝉の鳴き声が BGM。
ぐんと伸びた緑に囲まれた道を進む。
ローカル線ならではの仰々しく囲われていない線路。
道路と隣り合わせで同じ行き先を進む、二つの路(みち)。
よくよく見ると、柵にはかつての枕木が使われているようだ。
これがほっこりする景色を作り出しているのかもしれない。風景に自然に馴染んでいるのが心地よい。
さらにゆっくり進んでいくと、お庭のお手入れ中のご近所さんと出会う。「秋の七草」のひとつであるオミナエシを採っているところだった。
声を掛けて撮影をさせてもらった。秋らしいきれいな黄色。
いよいよ近づいてきた、上総中野駅。
駅舎と、奥に見える変わった建物は、この地域でよく採れるという竹の形をしているトイレなのだそうだ。
駅の反対側にたどり着いた。小湊鐵道の線路に沿って歩いた、200m 余り。
電車と歩くことができたらさらに良かっただろうか。
いや、静かに虫の音が響くこの夕暮れ時に、線路を横目に歩けただけで充分贅沢だったような気がする。
写真・文 イシカワ